『君の名は。』のヒットで恋愛に興味がない若者は変わるのか?

 昨日、『君の名は。』を語ったせいなのか、今日変な夢を見ました。でも、夢の内容はわたしだけの秘密にしておきます。

 さて、前回は、『千と千尋の神隠し』と『君の名は。』がどちらも名前を探すという名目で、自分が誰であるかを教えてくれる人を探しているという日本人が抱く特有の問題がヒットの原因ではないかという話をしました。

https://ninjinchuihou.amebaownd.com/posts/1422250

 今回は、この議論を補強するために、現代の若者が置かれている状況についてデータをあげながら考えていきたいと思います。まず、若者の恋愛観についてです。


20代男性の53%が交際経験なし 恋人がいるのは5人に1人、結婚願望も激減

http://news.biglobe.ne.jp/domestic/0622/blnews_160622_7568338403.html

 明治安田生活福祉研究所は、全国の20歳から49歳の男女3,595人を対象に「恋愛と結婚」に関する調査を実施し、結果を公表した。

 調査結果によると、20代未婚男性の53.3%、30代未婚男性の38.0%が交際経験なしと回答。女性では20代未婚の34.0%、30代未婚の25.7%が交際経験なしだった。3年前の2013年度調査と比較すると、20代・30代の男女とも交際経験がない人の割合は増加しており、特に20代男性は30.2%から53.3%と23.1ポイント上昇している。

 恋人がいる人は、20代男性では 22.3%で5人に1人、20代女性では33.7%で3人に1人だった。恋人がいる人の割合は低下傾向で、特に男性は、20代が2008年の45.8%から22.3%に、30代も37.7%から18.0%へと、いずれも半減している。

……引用終わり


 このように、いまの若い男女の7割以上は交際しておらず、20代男性の交際未経験は過半数越え、20代女性の3人に1人は交際経験がなく、恋人がいるという人の数は2008年からわずか8年で交際しているという男女は半減していることがわかります。

 言うまでもないことですが、『君の名は。』という映画はボーイミーツガールの青春物で、直接的に恋愛に発展する描写こそありませんが、観客はそれを前提として見ているはずです。

 さあ、わからなくなってきました。2016年6月時点で、若者の恋愛に対する興味は2000年代に入ってからの数字と比べても極端に下がっています。その一方で、ボーイミーツガールの青春物映画がバカ売れする。どうみてもアンバランスだとは思いませんか?

 この事実は2通りに解釈できます。まず、若者は実は恋愛をしたいと思っているが相手がいないなど条件が整わないので映画という空想の世界で欲望を満たしているという説。もう一つは、恋愛

 ちなみに、ここでは絵がきれいとか、音楽がいいとかそういう外的なものはあくまで加点要素として考えて、ヒットの本質としては考察しません。それについては様々な人がすでに語っているからです。

 この問題をさらに考えるために、先ほどの記事の続きを以下、引用します。


 結婚願望がある人は、20代では男性が38.7%で2013年度調査の67.1%から28.4ポイント低下、20代の女性は59.0%で82.2%から23.2ポイント低下。30代男性は40.3%で52.9%から低下、30代女性は45.7%で60.3%とから低下と、30代でも男女とも10ポイント以上低下した。

 結婚相手に求める最低年収については、400万円以上と答えた女性が20代で57.1%、30代で67.9%と半数以上となった。一方、未婚男性で年収が400万円以上の人は、20代ではわずか15.2%、30代でも37.0%にとどまり、女性が希望する年収とは大きなギャップがあることがわかった。

……引用終わり


 つまり、給与所得が下がり続ける日本経済の長期停滞や、労働者の4割は非正規雇用で、若者の場合は過半数が非正規雇用であるという経済的社会的状況のために、結婚する条件が整わず、結婚を前提とした付き合いが難しいのかもしれません。

 20代は10代と違って、結婚を考えつつ恋愛する時期でもあるので、結婚が難しいとあきらめてしまうと恋愛のモチベーションが上がらないと考えられます。恋愛が遊びに過ぎないならば、いまの時代はアイドルに熱中したり、スマホゲームや趣味に熱中したりできます。恋愛がそれらと同じような価値しか持たないならば(結婚という特別なイベント抜きの恋愛ならば)、若者の恋愛離れが進むのは当然と言えるでしょう。

 この映画のヒットは次のような背景があると思われます。

 いまの20代は男女雇用機会均等法以来、男女共働きが進む一方で長時間労働低賃金での労働を強いられた結果、恋愛をするための心のゆとりと時間と気力が失なわれています。その多くは結婚を前提にした付き合いができず、条件があっても相手がいない。それが、異性交際への興味を失わせている原因の一つです。

 かといって恋愛そのものに興味がなくなっているわけではないことは『君の名は。』のヒットから明らかです。そこには現代の若者を引き付ける何かがあったのだと思います。

 それは恋愛の困難性、相手の不在という彼らがおかれている状況です。偶然にも、『君の名は。』では、男女のすれ違い、つまり恋愛の困難性と、運命の相手がここにはいないといういまの若者の抱く感情が作品の前提と構造と一致しています。そこに若者は共感を抱いたのかもしれません。

 つまり、いまの若者は恋愛への欲求はあるが現実の恋愛は難しいと感じており、そうした状況にある若者が感情移入できて、かつそれゆえ手軽に恋愛を楽しみたいという巨大な需要が存在していたと考えられます。

 『君の名は。』という作品は、こうした手軽に運命の人と会える物語を消費したいと願う人々に受けたと考えられます。

 いまの若者世代はコストパフォーマンスを重視していると言われますが、映画は通常でも1回1800円で、前売りや割引の日に見にいけばさらに安く見ることができます。これは実際に異性とデートしたときのデート費用よりも安いと思われます。つまり、恋愛を楽しめるという欲求を比較的安いコストで満たすことができ、コスパがいいのです。

 また、恋人がいない人と、恋人がいる人同士ではそうした話はできませんが、『君の名は。』で疑似体験をすることで、共通の話題で話すことができることも、SNSでの爆発的な人気の広がりにつながっているのかもしれません。つまり、本作を見れば、恋愛格差を意識することなく、恋愛話の輪に入っていくことができる、そういう側面もあると考えられます。

 『君の名は。』は、単に恋愛を手軽に楽しみたい人だけでなく、カップル層も楽しめる映画だったので、恋愛を望みながらできずに、手軽に楽しみたい若者と、恋愛しているカップル層の両方の需要を獲得することができたこともヒットの要因かもしれません。


 本作の若者の意識に対する影響ですが、本作によって恋愛の価値が見直される可能性は十分あると思いますが、結局、今の若者の置かれた社会状況や心の持ちようが変わらない限り、彼らが、積極的に恋愛にいそしむ可能性は低いと言わざるを得ないでしょう。つまり、いまのままだと一時的なブームで終わる可能性が高いです。この作品が時代を超える傑作になれるかどうかは、この作品が若者の意識や行動にもたらす変化次第と言えそうです。


 第1回目は運命の相手と名前の話、第2回目は若者の恋愛観とヒットの理由を考えてきましたが、次回、第3回目は視点を変えて、運命の相手についてもう少し深く検討するつもりです。『君の名は。』と『シン・ゴジラ』が同じ夏に流行る日本社会に共通するもう一つの問題点、日本人が一体何を求めているのか、それを明らかにしたいと思っています。

 全5回の予定でしたが、都合により一つ記事を削除して、全4回とします。一応、内容的にはすべてつながっているはずです。


では、また あした

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空からにんじんが降ってきてなにかが変わったらいいなと願っているブログ。 ……というのは冗談。 第三次世界大戦に関することや世界統一政府に向かう陰謀シナリオなどを予想したり、時事ネタなどを書いています。

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